国際エンドーサーの古屋です。
リスニングルームにおけるチューニングを施していますと、新たな多くの学びがあります。といいますのは、メーカーサイドの人間として機材チェックを繰り返したり、若しくは販売のために機材をエクスプロールするという受動的な感性で音に接するのではなく、積極的に自らの求める音を探し求めるという意味から、機材の可能性を大いに探るという絶好の機会に恵まれる環境とも言えるからです。
各機材、特にSKY AUDIOのスピーカーとPerformer s800のコンビネーションに関しては、驚くべきその性能に感動しています。今回は特にs800について深く掘り下げてみたいと思います。120vテクノロジーについては、様々なところで書かれていますので割愛させて頂きますが、これまでの機材とは全く異なる機構にて、通常の数倍もの電圧をオペアンプで発生させることにより、140dB以上のダイナミックレンジを誇ることで、信じられないほどのS/N比を誇るサウンドを生み出しているという事実は、皆様既にご存じのことと思います。
正にこの120vが最も得意とするダイナミックレンジを、全身全霊で受け止めるのがパワーアンプということになれば、正にSPLフィロソフィーを大いに感じることの出来る機材の一つだと言えるかと思います。
一番最初にs800を聴いて驚いたのが、ベルギーの友人であるマスタリングエンジニア、ダン・ディタンゾのスタジオでamphionに繋がれたs800を聴いたときでした。それまでamphionのイメージと言えば、自らで使用しているKii Audioの精度には到底叶うはずもなく、パッシブスピーカーならではの脆弱さの方が目立つというイメージがありました。
しかしs800を用いられたamphionは、純正品からは到底到達できないであろう豊潤な響きと深いダイナミックレンジを発生させており、amphionのイメージを一新する出来事でもありました。
また、ドイツのニュルンベルグに所在するイーグルのレコーディングスタジオには、シュトラウスのスピーカーにs800が用いられています。大容量のシュトラウスを難なく一台で駆動させるそのパワーと共に、細部にわたる表現力には驚かされました。特に中低音の表現力と、シームレスに繋がっていく中高音の表現というものは逸品で、何処か頼りなさを感じてしまうクロスオーバーに掛かりがちな300-400Hz前後や、1.5kHz-2kHz辺りの表現も、変な強調をせずに美しく鳴り上がる様は、楽音における表現の精度を重視するSPLならではと言えるかと思います。
これは昨今出始めたインターフェイスを持ち合わせるヘッドフォンシステムに対しては大いに役立つと考えられ、耳元でドライバーが鳴るヘッドフォンにおいては、このとてつもないダイナミックレンジとS/Nというものが、楽曲に対して大きない影響を与えることをご体感いただけるかと思います。加えて、これほどの性能を持ち合わせながら、額面をそれなりの許せる範囲内に抑えてきたSPL社の底力というものを、存分に味わって頂けると思っています。
兎に角音楽の本場ドイツを中心としたヨーロッパ全体において、Performer s800の普及率は非常に高く、アメリカが多少の大味を許容しながらもパンチーなサウンドを作り上げるのに対して、美しさを前面に出しながらも、その高い精度で芸術性を昇華させるヨーロッパの音楽シーンには、正にうってつけと言える機材なのかもしれません。
これまで輸入代理店はじめ、どちらかと言えばアメリカ・イギリスを追う姿勢性が強調されてきた国内市場ですが、ヨーロッパの音楽産業で働いてきた身からすると、3大Bを生んだドイツ周辺国の底力からというものを、もっと国内にご紹介していきたいと思っているところでもあります。
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